大人数のマーダーミステリー(10〜30人以上)
2026年8月14日 公開 · 約 10 分で読めます
8人でうまく回る形式は、12人から20人のどこかで必ず壊れます。大人数のもてなしが難しいからではなく、容赦のない制約が一つあるからです。一度に喋れるのは一人だけ。
計算してみましょう。3時間の会から到着・食事・解決編を引くと、実プレイは約100分。10人なら一人あたり10分で十分です。25人なら4分。これでは調査もキャラの提示も尋問もできません。誰かがグラスを持って2時間半うなずくことになります。
これを解くことが大人数マダミスの問題のすべてで、良いシナリオを選ぶことよりずっと重要です。
成立する四つの形式
1. 回遊型(12〜40人)。 席も進行ラウンドも固定しない。全員が軽いキャラカード(名前・関係・秘密一つ・知りたいこと一つ)を持ち、自由に動く。会場中で同時に20の会話が走ります。「一度に一人」の制約を、並行で回避する形式です。25人なら5〜6の会話が同時進行し、実質発言時間は20分以上に戻る。代償は大きな見せ場が作れないこと。25人が同時に見守る対決は成立しません。
2. 並行テーブル(16〜60人)。 5〜8人のテーブルに分け、全卓が同じ事件を同時に、独立して競って解く。各卓に同一の証拠パックを配り、それぞれが告発を提出し、卓ごとに採点する。線形にスケールする唯一の形式で、60人なら10卓です。プレイヤー一人の体験は小規模卓とまったく同じ、つまり良いほうの体験になります。構造的な代償はなく、かかるのは印刷費だけ。プロの進行役が大人数で使うのはこれで、家庭の主催者がいちばん思いつかないのもこれです。
3. 探偵チーム(15〜40人)。 ハブ&スポーク型。5〜6人の容疑者を有志かスタッフが演じ、部屋や一角に固定で待機。残り全員を3〜4人の探偵チームに分け、順番に回って尋問します。発言の制約は容疑者側にしかかからず、彼らはそもそも喋るために志願した人たちです。部屋数と、2時間繰り返し演じてくれる5〜6人が必要になります。
4. 共有捜査+スコアボード(人数不問)。 キャラは一切なし。3〜5人のチームが同じ事件を競って解く。証拠は全員に同時放出、チームごとに相談して書面で告発。推理が小チームの内側で起きるので、総人数は無関係です。衣装も演技もありませんが、代わりに文字どおり全員が参加します。どの大人数グループにも三分の一はいる「演じたくない人」を含めて。
人数別の選び方
| 人数 | 第一候補 | 第二候補 | 避けるもの |
|---|---|---|---|
| 10〜14 | 通常のなりきりシナリオ | 回遊型 | — |
| 15〜20 | 回遊型 | 探偵チーム | 20人分の台詞がある単一シナリオ |
| 20〜30 | 並行テーブル | 回遊型 | 全体で一つの会話を要する形式 |
| 30〜50 | 並行テーブル | 共有捜査 | 個別キャラ形式 |
| 50以上 | 並行テーブル | 共有捜査 | すべてのなりきり形式 |
注目すべきは15〜20の行です。ちょうど多くの主催者が「20人用シナリオ」を買いに行く規模であり、単一シナリオが最悪になる規模でもあります。一つの会話には多すぎ、分割する構造には足りない。
キャラは三層で設計する
なりきり形式をやるとしても、参加者一人ひとりに独立したキャラは要りません。それをやろうとすることが大型シナリオの崩壊原因です。
- 中核(5〜7人): 完全な背景、本物の秘密、真相に不可欠。あなたの容疑者です。意図的に配役し、個別に説明すること。
- 準中核(5〜10人): 一人一枚。中核の誰かとの関係、秘密一つ、有用な情報一つ。消しても謎は壊れません。
- 探偵・来客(人数無制限): 背景不要。名札と世界内の立場(「あなたは記者」「あなたは隣人」)、そして誰にでも質問してよいという許可。
30人を成立させるのはこの第三層です。しかも妥協案ではありません。演じるより調べたい人はかなり多く、しがらみのない探偵はその場でいちばん自由な立場です。
下の二層を削除可能に設計すること。 大きな会は当日必ず人が減ります。22人全員が揃わないと成立しないシナリオは、インフルエンザ一つで壊れます。
25人の進行表(並行テーブル、5卓×5人、3時間)
| 時間 | 内容 | 主催の仕事 |
|---|---|---|
| 0:00–0:30 | 到着、飲み物、卓の割当 | 入口で卓を指定する。 自由に座らせると自信のある人が固まり、知らない者同士の卓ができる |
| 0:30–0:45 | 全体への導入・ルール・採点説明 | 全員が一つの声を聞く最後の機会。8分以内に |
| 0:45–1:20 | 証拠パック1、各卓が調査 | 巡回する。静かになった卓は詰まっている。答えではなく問いを渡す |
| 1:20–1:40 | 休憩・軽食・中間スコア発表 | ここで競争心が点火します |
| 1:40–2:20 | 証拠パック2、調査継続 | 誤った説に早く固着した卓を横から揺らす |
| 2:20–2:35 | 書面で告発提出 | 厳格な締切。二度告知する |
| 2:35–3:00 | 全体へ解決編、採点、表彰 | 事件の起きた順ではなく、証拠を出した順に解く |
実務メモ五つ。入口で卓を指定。卓は意図的に混ぜる(仕切れる人、声の大きい人、丁寧に読む人。静かな人5人の卓は解けないし楽しくもない)。中間スコアを出す。全員に見えるタイマーを使う(25人は声では動かせないが、時計は動かせる)。推理に配点する(犯人2点、手口3点、動機2点)。
規模が上がると起きる五つの問題
騒音。 一部屋25人は本当にうるさく、二時間目には自分の卓の声も聞こえなくなります。空間(別室、屋外、隅)か布で対処すること。硬い床のホールに30人は、大人数マダミスが失敗する最大の原因です。
割り当てのない人。 卓にも役にも仕事にも入りそこねる人が必ず出ます。予備の資料を二部と「助手」の役を一つ用意しておくこと。
遅刻。 25人規模なら45分遅れは必ず出ます。「今着いたばかりの証人」「第二の捜査官」など途中登場の役を作り、追いつかせようとせずそこに入れる。
聞こえない解決編。 クライマックスはその夜いちばん人が多い瞬間で、いちばん聞こえない瞬間でもあります。高い位置に立ち、静かにさせ、30人を超えるなら拡声を使うこと。前列三卓にしか届かない名解答は失敗です。
証拠切れ。 大人数は想定の三倍の速度で素材を消費します。5卓が並行で15分あれば一パック使い切る。想定の1.5倍を用意し、場が止まったときに出す予備を一つ握っておくこと。
大人数をリモートで
8人を超えると、ビデオ通話ではなりきりが完全に成立しなくなります。解決策は対面と同じで、小さな部屋に割ること。
- 4人のブレイクアウトルームで全室が同じ事件を解き、スコアボードを共有。これは並行テーブルのオンライン版で、40人程度まで機能します。
- 15分サイクル——ブレイクアウトのあと2分の全体集合で、各室が発見を一つ報告。このリズムが全体を一つの集団に保ちます。
- 各室に画面共有する操作役を置き、サイクルごとに交代。
- 共有の証拠フォルダにタイマー放出。どの室もホスト待ちにならないように。
時差をまたぐなら非同期形式で二〜三日かけるのが確実です。技術面はZoomとDiscordへ。
大人数向けの低準備ルート
並行テーブルも共有捜査も、必要なものは一つだけです。5チームが独立して議論しても全員が納得できる質の事件。そこがいちばん難しく、そこはあなたが書かなくていい部分です。
各卓にノートPCかタブレットで同じ事件を出し、紙のタイムライン用紙を配り、上の競争構造をかぶせる。事件が証拠と容疑者と固定された解答を供給し、あなたはスコアボードとタイマーを供給する。総準備量は採点用紙の印刷だけです。
競争形式に向くのは部品が多く、卓ごとに分担できる事件です。豊穣詠唱団(十の石、十の扉、九夜——うち二つの石は嘘)、狐の面、魔方陣の館はいずれも分業した卓に報います。枠が短いなら雪夜の追跡が約80分で収まります。一覧で所要時間を確認してから予定を組んでください。
よくある質問
上限は何人ですか?
個別キャラ形式なら12人あたりで発言時間が崩壊します。並行テーブルなら実質的な上限はなく、プロの進行役は数百人規模で回します。制約になるのは会場の音響、印刷量、そして解決編が全員に聞こえるかどうかです。
参加者全員にキャラが必要ですか?
不要ですし、やるべきでもありません。中核5〜7人、準中核は一枚もの、残りは探偵。ドタキャンに強く、演じたくない三分の一に本当に良い役を与えられます。
どれくらいの長さにすべき?
前後3時間、実プレイは2ラウンドで約90分。大人数は小人数より移行に時間がかかります(指示一つが浸透するのに3分と見積もる)。想定より余白を多く取り、最後の解決編を守ること。
20人以上が迷子にならないためには?
構造と可視化された時間です。明示された2ラウンド、印刷した証拠スケジュール、全員に見えるタイマー、そして一人一役割。大人数が離脱するのは退屈だからではなく、次に何をすべきか誰も告げていないからです。
大人数で一つのオンライン事件を遊べますか?
遊べます。3〜5人のチームに分け、全チームが同じ事件を解き、互いに採点する。必要なのはチームごとに一画面だけ。大人数でいちばん準備が軽い方法で、対面でもビデオでも同じように機能します。友達と遊ぶマーダーミステリーも参照。